登録商標権への侵害の基準とは?警告があったケースの対応と罰則の中身

「商標」は「あきないに関するしるべ」との意味であり、商業の現場で商品や役務がどこが扱っているものかの案内板として働きます。この「あきないのしるべ」には商標権が設置されているものがあり、許しもなく配置すると登録商標について権利の侵害になるとして裁判沙汰になり、警察による捜査の対象にもなります。登録商標に関する警告書がきた場合の対応や、適用される刑罰の概要について社長向けにまとめました。

索引

(1)登録商標への権利侵害とは?

商品や役務には需要者に認知してもらう名前を付けることが求められます。この名前が商標です。商売をしている人はみんな商標を商品等の目立つところに配置しています。

ところが商標の使用継続を行っていても、特許庁に登録商標の設定のための書面を提出していないと登録商標の保有者になることはないです。

商品等へ与える名前にはそれぞれ権利が設定され、許諾がない場合には使用禁止になっていることを知らない人もいます。登録商標の権利があることを関知せずに商品等に商標を配置していると、登録商標権者から警告がきたり、捜査機関から呼び出しがきたりします。

登録商標への権利侵害とは?

登録商標に関連して、権利の持ち主と関係がない人によっては許しなしには使えない範囲が存在します。この内部へは許しなく立ち入ることができません。この無断立ち入り制限領域に許諾なく立ち入ると、登録商標権に対する侵害に該当して、刑罰の適用がありえるのです。

登録商標権への侵害となる行い

登録商標についての権利とは、登録商標の権利についての持ち主が、設定済みの商標もしくは似かよった商標を、登録の際に選別された商品とか役務に関連した無断立ち入り制限領域の中で権利の持ち主だけが他人を退けて使用できるようになる権利を指します(商標法第25条、第37条第1項第1号)。

言うまでもありませんが登録商標についての権利の持ち主が許した身内が登録商標について扱ったとしても何ら問題にはならないです。

ここで「権利の持ち主だけが他人を排除して使用が可能」との意味は、許諾を得ていない人が無断立ち入り制限領域の中に入ってきた場合には、裁判所に訴訟を請求したり、捜査機関により検挙するよう働きかけたりすることが可能との意味です。

登録商標の権利である無断立ち入り制限領域は、専用権と禁止権を合算した二つの領域を含みます。

二つの範囲がカバーする相互の範囲は次の通りです。

表1 登録商標の権利となる無断立ち入り制限領域と専用権・禁止権との対応

senyouken_kinshiken_hani

登録商標とは、特許庁で保管されている原簿に設定記入済みの商標と相等しいものをいいます(商標法第2条第5項)。登録商標に関する権利は、登録商標と関連する商品または役務に対する無断立ち入り制限領域内について有効です。

上記の関係から商品内容や役務内容とかが提示されなければ登録商標の無断立ち入り制限領域内が把握できない関係となっています。

登録商標権を侵害すると言えるのは下記のケースです。

登録商標の相等商標を登録済みの商品役務に設置したケース

登録商標の相等商標を登録済みの商品役務に設置したケースは、登録商標の権利の専用権の内側の使用に対応します。

専用権とは、登録商標の権利の内側の核部分を意味し、特許庁で保管されている原簿に表現された内容そのものの権利です。

登録商標と似かよった商標について、無断立ち入り制限領域内の商品・役務に配置したケース

登録商標と似かよった商標を、無断立ち入り制限領域内の商品・役務に配置したケースとは、登録商標の権利の禁止権の内側の使用に対応します。

禁止権とは、登録商標の権利のうち専用権を包囲部分を意味し、特許庁の内部に保管されている原簿に表現された内容を超えた無断立ち入り制限領域内での権利です。

登録商標の権利と無断立ち入り制限領域との対応

登録商標の権利が持つ専用権および禁止権との対応を、以下に示します。

無断立ち入り制限領域の中の専用権の領域:同一関係

  1. 特許庁で保管済みの原簿に記入された商標と、原簿に記入された選定商品役務

無断立ち入り制限領域の中の禁止権の範囲:似かよった関係

  1. 原簿に記入されたものに相等の商標であり、原簿に記入された選定商品役務と似かよった商品役務
  2. 原簿に記入されたものに似かよった商標であり、原簿に記入された選定商品役務と相等の商品役務
  3. 原簿に記入されたものに似かよった商標であり、原簿に記入された選定商品役務と似かよった商品役務

専用権は原簿の記入内容そのものです。文字通りに記入されたものと同じ領域です。禁止権は無断立ち入り制限領域を広げて専用権をさらに守るためのものであり、専用権を包囲するように設定されます。

登録商標の権利は、商標登録証に直接表示されている範囲を超えて届くことは盲点になりやすいです。

専用権および禁止権による無断立ち入り制限領域の内側で商標を扱うと、登録商標権の侵害を問われる結果になります。

登録商標侵害の具体例

無断立ち入り制限領域の内部で登録商標を商品等に配置すると登録商標権の侵害を問われます。

  • ネットの転売でホームページのタイトルに他人の登録商標を表示する
  • 有名登録商標を表示して電子書籍をダウンロードさせる
  • 東南アジア製のブランド商品のまがいものを販売目的で輸入する
  • 商品の包装に無断で有名店の登録商標を配置する

無断立ち入り制限領域に侵入しなくても法律違反になる場合がある

これまでの説明は無断立ち入り制限領域に侵入することを前提に説明していますが、無断立ち入り制限領域に侵入しようとする計画段階で法律違反に問われる事例があります。

侵害が発生していなくても、今まさに侵害が発生しようとしている段階でストップできるようにするためです。

このため無断立ち入り制限領域に侵入した事実がなくても、登録商標権との衝突が指摘されるケースがあります。

例えば、有名ブランド品の登録商標が表示された包装物を販売目的で手元に置いておく場合、登録商標エンブレムを、権利侵害目的で持っている場合などは登録商標権と抵触する犯罪行為として対応されます(商標法第37条各項)。

無断立ち入り制限領域に侵入した場合は「直接侵害」といいます。これに対し上記のように無断立ち入り制限領域に未だ侵入してはいないが、侵入したものとして扱われる場合のことを「間接侵害」といいます。

(2)何をしたら登録商標の権利侵害になる?

登録商標権に対する侵害を指摘される場合は、許諾を受けていない人が無断立ち入り制限領域に侵入したことが必要になります。

無断立ち入り制限領域に侵入したかどうかは、専用権又は禁止権の内部で商標をつかっているかどうかにより決まります。

原簿に表示された商標と無断侵入に該当する商標とが共通するか似かよったものなのか、原簿に表示された商品役務と無断侵入に該当する商品役務とが共通するか似かよったものなのかを基準に判断していきます。

【登録商標の権利侵害になる基準】

登録商標の権利侵害になる基準は次の四通りです。

  1. 原簿表示の商標と共通&原簿表示の商品役務と共通
  2. 原簿表示の商標と似かよっている&原簿表示の商品役務と共通
  3. 原簿表示の商標と共通&原簿表示の商品役務と似かよっている
  4. 原簿表示の商標と似かよっている&原簿表示の商品役務と似かよっている

【登録商標の権利侵害とはならない基準】

商標権侵害にはならないパターンは次の通りです。

  1. 原簿表示の商標と関係がない&原簿表示の商品役務と関係がない

原簿に記入済の商標とか商品役務に関して、片方でも関係がない場合には全体として権利侵害とは関係がなくなります。

次に比較されるそれぞれの商標が似通っているとみられるか、比較されるそれぞれの商品役務が似かよっているとみられるかについて判別する基準の解説に移ります。

(2-1) 商標が似かよっているかについて

比較するそれぞれの商標が似かよっているかの点は、外観、称呼および観念の要素により判定していきます。一般には外観、称呼および観念が相等するときに、比較する商標のそれぞれは似かようものとみます。

商標の外見(外観)

比較されるそれぞれの商標の外観が相等する際に、比較するそれぞれの商標は似かよっています。

一例を挙げると、「タ(「た」の片仮名)」と「夕(「夕日(ゆうひ)」の左側の漢字の一字)」とに関して、称呼に加え観念は違いますが、外見は同じと言ってよいです。このため、外観を基準に「タ」と「夕」とはそれぞれ似かよっています。

商標の発声音(称呼)

比較するそれぞれの商標に関する発声音が相等する際に、比較するそれぞれの商標は似かよっています。

一例を挙げると、「東急」と「109」とは、外観とか観念は違いますが、称呼は同じと言ってよいです。このため、称呼を基準に「東急」と「109」とはそれぞれ似かよっています。

商標により受ける主旨(観念)

比較するそれぞれの商標より受ける主旨が相等する際に、比較するるそれぞれの商標は似かよっています。

例えば、「Big」と「大きい」とは、外観とか称呼は共通しているとはいえませんが、観念は同じと言ってよいです。このため、観念を基準に「Big」と「大きい」とはお互いに似かよっています。

全体判断に基づいて出所による混同誤認が生じうるか

比較する商標のそれぞれの場合に、需要者の観点から商品や役務の提供者について間違いが起こりうるのかどうかを考慮します。なお需要者とは、審査官とか裁判官とかが想像するもののことです。

さらに外観、称呼および観念が相等する際に、特定の要素が明かに違うことから、混同誤認がありえない状況なら、比較される商標は関係がないとみます。

例えば、「虫」と「無視」とを比較すると、称呼の基準により相等しいですが、通常の生活の中で「虫」と「無視」とを取り違える可能性は認められないので、それぞれは関係する点がないと判断します。

(2-2) 商品役務が似かよっているかどうか

実際の取引現場で、同じ標章を貼った場合に、出所に関する誤解の発生があるか否かを元に考えます。

現実の商取引の実情も考慮して、需要者の間で取り違えが生じるかどうかも考えます。

例えば、同じウェブサイト上で販売対象となる商品と役務同士に関連して、比較する商品と役務が似かよっている判断対象になる可能性です。一つを挙げれば、商品に位置づけられる「スマートフォン用のアプリ」は役務に位置づけられる「スマートフォン用のアプリケーションの提供」と似かよっているものと考えられます。

(3)知らないでは済まない!登録商標への侵害のリスク

(3-1) 法的なリスク

登録商標の保有人が無断立ち入り制限領域に侵入した人を見つけた場合には、法律で許される攻撃を開始するリスクがあります。

法律で許される攻撃の一つとして民事対応があります。裁判所に認められた場合には以下の攻撃が実施されます。

使用中の商標の中止が通告される

営業の停止が通告されます。事業を止めないと登録商標権との抵触が終了しないままになるからです。登録商標の配置されている商品の販売中止の請求に加えて、登録商標が貼ってある商品の処分も通告されます。

問題となる商標の付帯物の破棄命令がある

権利の侵害として問題となる商標の付帯物を例示すると、次のようなものが挙げられます。

  • 店舗に付帯しているもの:かんばん、食器類、はしぶくろ等
  • 営業に付帯しているもの:ネームカード、ポスター、ちらし、技術資料等
  • 電子的に付帯しているもの:ウェブサイトに掲載されているそれぞれのロゴ・マークなど

会社名とか商品の名前を変えることを強要される

会社名を自由に使うことのできる場合には制限があり、自由な改変使用までは法律上認められていません。このため装飾化して会社名等を商標として使用している場合には、登録商標の無断立ち入り制限領域に侵入したとして攻撃されるケースがあります。

この場合には会社名や馴染み親しんできた商品の名前を失うことになります。

例えば、ネットで検索してこれまでお願いしていた会社名が見つからない場合とか、他の会社に変わっていることに気付いた場合には、あなたならどう感じるでしょうか。

通常、会社名を変更したところは登録商標権で問題が発生したから名前を変えました、とは発表しません。法律面でトラブルが生じていることを知られると顧客への信用に関わるからです。

ネットで検索してこれまでお願いしていた会社名が見つからない場合には、あなたは「ああ、この会社は潰れたんだ」、と思いませんか。

こういった小さなことがきっかけとなって、これまできてくれていた顧客が一斉に引き始めます。

事業を始めた最初の段階では看板掛け替え費用とかカタログの刷り直し費用を持てば良いかも知れませんが、事業を始めてから時間が経つと、失うのは変更費用だけではないこと、もっと大きなものを失うことに気が付くはずです。

登録商標に絡むトラブルは、実際にトラブルに遭うまではその影響について実感が湧かないことが最大の難点です。

(3-2) その他のリスク

登録商標の保有者による攻撃は、普通、問題となる商標を使うのをストップさせるだけではないです。商標権侵害に基づく損害賠償等も要求があります。

損害賠償請求

登録商標の保有者からの攻撃はこれだけでは止まりません。上記の攻撃に加えて、これまでの侵害についての損害賠償が請求されます。

事業を行うことにより利益を挙げていたとしても、損害賠償によりその利益の全てを持って行かれてしまいます。

信用回復措置

登録商標権を侵害することにより登録商標の保有者が信用を傷つけられたと感じた場合には、謝罪文の掲載を求められることもあります。

買取要求

登録商標の保有者から登録商標を大変な値段で買い取るよう強要されることもあります。

(3-2) 刑事罰(商標法78条)

以上の説明は民事対応でしたが、この民事対応に加えて刑事対応も可能です。

登録商標の権利を侵害した人に対しては10年を上限とする懲役刑、一千万円を上限とする罰金刑が用意されています。両方の刑罰が併せて科せられることもあります。

法人への刑事罰も(商標法82条)

侵害実行者個人に加えて、登録商標に対する違反が法人ぐるみであったと認定された場合には、会社に3億円を上限とする罰金の適用があります。

(3-3) その他のリスク

ブランディングの低下

法律上のトラブルが発生すると、人間の心理としてそのトラブルの影響が自分に及ぶことを恐れます。また法律上のトラブルによりお店や企業としての信用や現在価値が損なわれる結果になります。

取引先は影響がくることを恐れて商売から手をひくようになります。また風評により顧客離れが進むことになります。

マスコミや外部機関から管理体制の不備を指摘されます。

これらの波状的な影響から、企業の株価へ影響の生じる可能性が存在します。

精神上の負担

登録商標の権利に抵触した際に、侵害した側が法律に違反したことになるので悪者に仕立て上げられます。
「侵害者」であるとか「パクリ」をした等がネットに書き込まれて炎上することもあります。

一度損なった信用を取り戻すためには長い時間と大変な労力が必要とされます。

(4)登録商標での抵触の訴訟があればどのようにする?

登録商標権が多数の人から侵害を受けた際に、狙いを一人に絞って登録商標の保有者は提訴が可能です。

このような事情から他のみんなも侵害しているので私も大丈夫、と油断するのは禁物です。一人だけが訴えられることもあります。

(4-1) 「登録商標の権利侵害に関する警告状」の送付

登録商標のプロである弁理士に警告状の中味が正当であるか見てもらう

登録商標の無断立ち入り制限領域に侵入したと登録商標の保有者が判断した際は、侵入者を標的に警告状の郵送があります。

警告状の意図は、無断立ち入り制限領域に侵入した側が円満な解決を希望して、争いが泥沼化せずに収束する場合もあるあkらです。

警告状がきた場合には、手拍子に返答してはいけません。

登録商標の保有者から「貴社が登録商標の権利を侵害しているかどうかは今は棚上げにしましょう。」と言われた場合に、それで話が終了すると勘違いして「そうですね。」、と同意するのは最悪な対応です。

棚上げを認めると、そもそも権利侵害などがなかったかも知れないのに、一応はこちら側が権利侵害の問題があることを認めたことになってしまうからです。

問題が最初からないのであれば、棚上げに応じてはいけません。

こういった行き違いが万が一にも発生しないように、登録商標の警告状が届いた時点で、登録商標権に関するプロフェッショナルの弁理士に警告状の確認を依頼します。

警告状を受けた当人は冷静さを失っている場合もありますので、専門家に客観的な見地から見解をもらうようにします。

自己判断は危険

話が大きくなるのを防ぐために、相手の言い分をよく確認しないままに鵜呑みにして認めてしまうのは危険です。相手から金銭を脅し取るようには見えない市民の仮面をかぶったプロ市民もいますので、当事者だけで話しを収めるのは必要のない負担まで背負ってしまう可能性があります。

(4-2) チェックするポイント

警告を発した相手はそもそも登録商標を保有しているのか

警告状を受け取った場合には、正当な権利者から発信されたものかどうかを確認します。

登録商標の保有者が会社なのに、個人名で警告状が送られてきた場合にはあやしいと言えます。
登録商標権を使うことのできるのは保有者に原則限定されるので、登録商標保有者のサポーター等は警告状を送る権原を持っていません。

また登録商標の保有者以外からの警告状は、事実上の意見表明に過ぎず、そのような意見については相手をする必要もないからです。

本当に登録商標の権利侵害といえるのか

登録商標の保有者が主張するような、無断立ち入り制限領域に侵入したといえる事実や証拠があるのかを確認します。そのような事実や証拠がないのであれば、権利侵害はそもそもなかった可能性が残ります。

問題となる商標は登録商標と関係しているといえるのか

登録商標権が侵害されているといえるのは、原簿記載の登録商標と、問題があるとされる商標とが互いに共通しているか、似かよっていることが条件です。

商標の似かよっているかどうかの判断の手順はこうです。

まず警告してきた相手の登録商標と問題となった標章の共通性・似ている程度を解析します。

解析により、互いに似かよっていると判断されるなら、慎重な対応が求められます。

登録商標権を侵害するかについては取引の実情も判断材料に用いられることから、弁理士との打ち合わせまでにできるだけ実体が判別できる記録などを準備します。

商品役務が似かよっているか

原簿に記録されている商品役務と、警告を受けた商品役務との間に何らかの関係があるのかないのかも検討対象になります。

つまり、比較する商標が似かよっている場合であっても、原簿に記録されている選定商品役務と、警告された商品役務との間に関連がなければ、登録商標権侵害は原則認められません。

「出所の誤認混同」が存在するか

形式的に登録商標の無断立ち入り制限領域に侵入した場合に見えるようであったとしても、実際の商取引の現場では何ら商品や役務の出所についての誤認混同が生じていないこともありえます。

需要者が違うものとして認識しているのであれば、形式的に似かよっているように思えても、実際には互いに関係がないものとして扱われている実体を評価できます。

もちろんこのような判断はかなり専門的な判断を伴うので、拙速に結論を出すのは避けて弁理士相談して、綿密な対応を考慮することが求められます。

通告を受けた商標が今では一般名称になっている場合

登録商標は生ものと同じで変化します。権利の形で特許庁の原簿に記入されているものの、経時的に普通名称に変化してしまい、権利を使うことが認証されなくなります。

例をあげると「アスピリン」、「エスカレータ」、「ホッチキス」等は登録商標であった場合にも、裁判では登録商標に関した差止請求等は却下します。こういった登録商標は経時的に普通名称に変化して、自由使用が承認されているからです。

警告された商標が「過誤登録」であった場合

商標法には審査に合格できる要件が定めらていますが、この要件を満たすことなく登録に至った登録商標が存在します。

そもそも登録してはいけなった権利に基づいて権利行使を求めるは権利の濫用に該当するため裁判所は請求を却下します。

(5) 登録商標権に対する侵害事例に向けた対応

登録商標に関する保有者は登録商標の保有者は無断立ち入り制限領域に侵入してきた人に対して法律に基づく攻撃が可能になります。

(5-1) 登録商標保有者の権利

差止請求(商標法36条)

登録商標の保有者は法律に違反する人に対して無断立ち入り制限領域に侵入することを止めさせる道が存在します。これを差止請求と呼びます。

裁判所で差止判決が得られると、商品の流通阻止、商品を含む侵害を組成した物の破棄、登録商標の権利に使用されるエンブレムなどの撤去等が認められます。

損害賠償請求(民法709条)

故意又は過失によって無断立ち入り制限領域に侵入した人に対して不法行為に基づく損害賠償を求める道が存在します。

登録商標権との抵触は多量の商品に乗って全国規模で実施される場合もあるのに対し、個々の事例の損害発生についての主張立証が簡単にはできないのが現実です。

この現状を打開するために、登録商標に関する補助規定として次の法律が設けられています。

  • 個別利潤を算出し、譲渡個数にそれを乗じた値について損害額として推定(商標法38条1項)
  • 無断立ち入り制限領域に侵入した人の儲けた部分を損害額と推定(同38条2項)
  • 許諾使用フィーに対応した額について損害額に推定(同38条3項)

これらの補助規定が設定された理由は、登録商標について権利侵害を主張して証明することが簡単ではなく、権利を侵害する者が後を断たなかった点を反省したものです。逃げ得を許さないために、登録商標の保有者が裁判で勝ちやすいような補助規定が設けられています。

不当利得返還請求(民法703, 704条)

登録商標の権利を持っているのは登録商標の保有者です。登録商標の保有者以外が無断立ち入り制限領域に侵入して利得を得たなら、それは元々は登録商標の保有者に帰属することになるはずの成果です。無断立ち入り制限領域に侵入した人に対して不当利得を請求する選択肢があります。

条件

一方、損害賠償請求とか不当利得返還請求も万能ではないです。

請求権に時効消滅が働きます。時効により消滅した請求権の部分は何もできなくなります。損害賠償請求の場合には三年が時効期間です。

また専門的になりますが、不当利得返還請求には準事務管理についての問題があり、侵害者が得た利益を吐き出させるかどうかについては賛否両論があります。不当利得返還請求の金額については、実際にはライセンス料に該当する額の要求にとまります。

信用回復措置請求(商標法第39条により準用される特許法106条)

単独で求めることも、他の法律上の請求分と併せて求めることも可能です。その一つとして信用回復措置請求があります。

新聞雑誌に謝罪広告を出させるなどして、権利侵害により失われた信用を回復するための方策を採ることができます。

(6)現実に生じた登録商標侵害においての事例

登録商標に関する侵害事件を取り上げます。

(6-1) モンシュシュ事件(2013年3月)

登録商標の権利と抵触することを理由に、登録商標「モンシュシュ」について、旧・モンシュシュ社を相手に5141万円の損害賠償が認証された事例です。

事件のきっかけ

旧・モンシュシュ社(現・Mon cher社)の店舗表記や営業表記に登録商標「モンシュシュ」が設置されていることを理由に、登録商標の保有者であるゴンチャロフ製菓社が大阪地裁に訴えたのがきっかけです。

大阪地裁の判決に続く控訴審判決が大阪高裁であり、旧・モンシュシュ社サイドの登録商標権に対する抵触の認証を受けて、旧・モンシュシュ社に対して5141万円の損害賠償を支払うべき内容になっています。

旧・モンシュシュ側は登録商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」を、飲食物の提供の区分に押さえています(商標登録第4939769号)。

しかし、旧・モンシュシュ側はケーキの店舗内提供の権利は保有していても、ケーキのお持ち帰りの権利までは保有していませんでした。

これに対し、訴訟に踏み切ったゴンチャロフ製菓サイドは、登録商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」について洋菓子に関するテイクアウトの分類に押さえました(商標登録第1474596号)。

旧・モンシュシュ側は菓子のテイクアウトも扱ったことを理由に、ゴンチャロフ製菓サイドの登録商標権に抵触するものと認証を受けました。

(6-2) ダサソー事件(2015年10月)

韓国において争われていた登録商標の抵触裁判の事例です。登録商標「ダイソー(DAISO)」の保有者である大創アソン産業社が、韓国の「ダサソー(DASASO)」の商標を配置した小売ショップに対する訴訟で、韓国の裁判所で判決がありました。

商標「ダサソー(DASASO)」は日本で有名な100均ショップの韓国における「ダイソー(DAISO)」の登録商標の権利を侵害すると認定され、日本円でおよそ1300万円の損害賠償が認定されました。

(6-3) エアウィーヴ事件(2016年2月)

エアウィーヴのマットレスで有名なエアウィーヴ社が、別のメーカーである西川産業社の登録商標「なごみ」の登録商標権を侵害したとして東京地裁に訴えられていた事件で判決がありました。

エアウィーヴ社の商標の使用が、西川産業社の登録商標「なごみ」の登録商標権を侵害することが認定され、880万円の損害賠償が認められました。

エアウィーヴ社側は、商標「エアウィーヴ」に「なごみ」との標章を併記したことがとがめられた結果になりました。

(6-4) 大阪「アメリカ村」のパロディー商品一斉検挙事件(2016年10月)

NikeやAdidasのパロディ商品の小売をしていた大阪ミナミの「アメリカ村」に対して取締機関による一斉手入れがあり、十数名が登録商標権の侵害容疑で検挙されています。また侵害した衣料品等も差し押さえられました。

登録商標違反のケースは登録商標の保有者の訴えがなくても警察に被害届けがなくても捜査機関は検挙に向けて動くことができます。このためいきなり検挙されることがあります。

(6-5) 「守りたい人がいる」事件(2010年3月)

埼玉県警側が登録商標権侵害に関与した珍しい事件です。

「守りたい人がいる」は陸上自衛隊の登録商標です(商標登録第4489386号)。この登録商標の存在を知らず、埼玉県警が商標「守りたい人がいる」を使用、ポスター2万枚を回収する騒ぎになりました。

ちなみに同様に警察側が過去に自衛隊の登録商標を使用して謝罪したこともあるとのこと。国民を守る側の身内の権利の存在にうっかりしたようです。

(7)まとめ

先のモンシュシュ事件でも見られるように、登録商標を保有していても登録商標を侵害するとして訴えられて、数千万円の損害賠償をしなければならなくなる場合があります。

これは比較する登録商標が共通するかどうかだけではなくて、登録商標に選定されている商品や役務の範囲についても判断されるからです。

このため一部の分野で登録商標を保有していたとしても、別の分野で登録商標を保有していなければ、保有していない部分で登録商標権の侵害で訴えられることがあります。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247


Fatal error: Uncaught Error: Call to undefined function wp_social_bookmarking_light_output_e() in /home/fareast/xn--czro89bx5ie22a.com/public_html/wp/wp-content/themes/mytheme/single-column.php:40 Stack trace: #0 /home/fareast/xn--czro89bx5ie22a.com/public_html/wp/wp-includes/template-loader.php(106): include() #1 /home/fareast/xn--czro89bx5ie22a.com/public_html/wp/wp-blog-header.php(19): require_once('/home/fareast/x...') #2 /home/fareast/xn--czro89bx5ie22a.com/public_html/index.php(17): require('/home/fareast/x...') #3 {main} thrown in /home/fareast/xn--czro89bx5ie22a.com/public_html/wp/wp-content/themes/mytheme/single-column.php on line 40
WordPress › エラー