結合商標とは?類似判断の手法と基準、判例について紹介

結合商標とは、様々な種類の標章を二つ以上組み合わせたものです。ここで標章とは文字、図形、記号等の商標の構成要素のことです。また結合商標は、識別力が強い特徴があります。単独では商標として認められない標章を複数連結することにより、識別性が向上する効果を利用して商標権を取得することができます。

索引

(1)結合商標とは?

(1-1) 結合商標とは何か?

結合商標とは、様々な種類の標章を二つ以上組み合わせたものです。ここで標章とは文字、図形、記号等の商標の構成要素のことです。

また結合商標は、識別力が強い特徴があります。単独では商標として認められない標章を複数連結することにより、識別性が向上する効果を利用して商標権を取得することができます。

(1-2) 結合商標の例

東京大学

登録商標「東京大学」(商標登録第4868078号)
特許庁公開の商標公報より引用

“東京大学”は、国立大学法人東京大学の登録商標です。「東京」の文字は単なる地名であり、「大学」は単なる学校の種類ですので、一法人が独占できる表記ではありません。

東京大学は、”東京”の文字標章と”大学”の文字標章とを組み合わせた結合商標です。

通常、一般名称である地名と、一般名称である業種名とを組み合わせても一般名称の域を出ることはないです。しかし”東京”の文字標章と”大学”の文字標章とによる結合商標である”東京大学”は非常に有名ですから、法律的に保護すべき財産的価値が生じていると考えられます。

有名な商標については、一般名称同士の結合商標であっても登録が認められるケースがあります。

yellowapple

商標”yellowapple”は、標章”yellow”と標章”apple”との結合商標です。


特許庁公開の商標公報より引用

上記の登録商標”yellowapple”(商標登録第5089128号)については、商標登録後、米国のアップルコンピュータ(正確にはアップルインコポーレーティッド社)から異議申立を受けました。

アップルコンピュータの主張は、登録商標”apple”が上記登録商標”yellowapple”と似ている、というものです。

上記登録商標”yellowapple”から商標”apple”が出るなら、米国のアップルコンピュータの主張通り上記登録商標”yellowapple”と商標”apple”とは類似するので、上記登録商標”yellowapple”の商標登録は取り消されます。

逆に上記登録商標”yellowapple”から商標”apple”が出ないなら、上記登録商標”yellowapple”の商標登録を取り消すことはできないことになります。

特許庁の判断は次の通りです。

特許庁の判断
「本件商標は、別掲に示したとおり、「yello」及び「apple」の欧文字とその間に図案化した「w」の文字との結合からなるところ、黄色の色彩に黒の縁取りを有する文字部分は、図案化された文字で特徴的に書されており、また、赤色の色彩に黒の縁取りを有する図案化された部分は、「w」の文字を「りんご」に模したというようにも見えるものであって、全体として「yellowapple」として理解され、まとまりよく不可分一体的に表されているものである。

 そして、本件商標の後半の文字部分が「apple」であるとしても、上記したとおり、全体としてまとまりよく不可分一体的に表されていることから、本件商標からは、中央の図形的部分を含む全体としての構成が強く印象に残るものであって、全体として纏まった1つの造語的な商標としてのみ把握、認識されるものとみるのが自然である。

 そうとすれば、本件商標は、その構成文字として理解される「yellowapple」の全体に相応して、「イエローアップル」の一連の称呼が生じるものであり、また、これより「黄色いリンゴ」の観念を生ずるものである。

 一方、引用商標は、特にパーソナル・コンピュータ関連分野をはじめとする関連商品において世界的に周知・著名なものと認められる。

 そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標は、全体として纏まった1つの造語的な商標としてのみ看取し、「イエローアップル」の称呼及び「黄色いリンゴ」の観念を生ずるものであるから、例え、引用商標から、「アップル」、「リンゴ(りんご)」の称呼、観念のほか、申立人の世界的に周知・著名な、いわゆるアップルロゴとしての商標の観念を想起させる場合があるとしても、両者は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似のものといわざるを得ない。

 してみれば、本件商標と引用商標とは、その比較において非類似の別異の商標といわなければならない。」

特許庁審決公報「異議2008-900040」より引用

結合商標の場合、商標として一体のまとまりがあれば、商標の一部分が他の登録商標とかぶったとしても、並列して登録が認められる場合があります。

(2)結合商標の類否判断

(2-1) 審理の流れ

商標の特定

まず審理の対象となる商標を特定します。商標は願書の商標を記載する欄に表示されている商標です。

ちなみに審理の対象となる商標は、願書の商標の記載欄に表示されているものだけで、出願人がその商標をどのように使いたいか、出願人がどのようにその商標を読ませたいかといった出願人の意図は考慮されません。

審査官が一般需要者ならどう考えるだろうか、と考えて審査します。

呼称の認定

審理の対象となる商標からどの様な称呼がでるかを審査官が考えます。ここでも一般需要者の判断を基準に審査官が判断します。判断基準は審査官個人ではなくて、一般需要者がどう考えるかが基準です。

ふりがなが振られた結合商標

ふりがなが振ってあっても、自然に読むことができるふりがな以外の読み方がある場合には、自然に読むことができる読み方の称呼がでるとして扱われます。

ただし、漢字の読み方には不自然な読み方は生じないものとして扱われます。

例えば結合商標「黄熊希星」の漢字のみを「ぷうきてぃ」と読ませることは、まずみとめられないです。

そのように読ませたい意図を持っている人が仮に存在しているにしても、一般需要者が結合商標「黄熊希星」を「ぷうきてぃ」と読むことを示す証拠の提示が困難だからです。

類否の判断

先に登録されている商標の権利範囲の内側にある商標は登録されません。このため審査対象となる商標と引用商標との類否の判断を審査官が行います。

なお較べられる二つの商標が相互に似ているかどうかは、外観、称呼、観念の三基準を用いて行います。どれか一つの基準が一致すれば二つの商標は互いに類似すると判断されます。

なおいずれかの基準がたまたま一致した場合でも、残る基準が大きく異なる場合には、二つの商標は互いに類似しないです。

総合観察

類否判断は商標の全体を総合的に見て行います。

商標によっては特定の観念がでる場合があります。この場合には観念類似を検討します。
また商標の外観が近似するケースでは、外観の類似についても考えます。

(2-2) 全体観察

商標同士を比べた場合には称呼の違いに目がいきがちです。称呼に違いがある場合であっても商標全体であれば互いに類似しないと評価されることもあります。

このため称呼だけに判断を頼るのではなく、観念、外観も含めて商標全体として類似するかを評価します。

結合商標の全体観察の具体例

商標「キシリデンタル」と「キシリデント」が類似するかどうかは全体観察の結果、類似すると判断されます。

 本件商標から「キシリデンタル」の称呼が、引用商標から「キシリデント」の称呼が生ずることは当事者間に争いがない。・・・(中略)・・・このように、両商標は、7音及び6音中の5音を共通とし、共通部分は、両商標において、語頭部分であり、かつ、アクセントの存する部分であって、差異部分は、上記程度の小さいものでその印象は薄く、商標全体に与える影響は小さいところから、本件商標の称呼は、全体として、引用商標の称呼と相紛らわしく、互いに聴き誤るおそれがあり、両商標は、称呼において類似するというべきである。・・・(中略)・・・本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において類似するとはいえないが、その差異は、取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものではない。・・・(中略)・・・外観について見ると・・・(中略)・・・両商標は、外観において類似するとはいえないが、その差異は、取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものではない。
「東京高裁平成13年(行ケ)第277号 審決取消請求事件」より引用

(2-3) 要部観察

識別力のある文字とそうでない文字の場合に適用されるのが要部観察です。

品質や地名等を表す修飾語がある結合商標は、修飾語の部分には識別力がないため、修飾語ではない部分が要部となります。品質や地名等を示す修飾語を備えた結合商標では、品質や地名等である修飾語を省いた商標と似ているとします。

結合商標の要部観察の具体例

商標「レディグリーン」と商標「レディ」が類似するかどうかは要部観察の結果、類似すると判断されます。

 結合商標「レディグリーン」と商標「レディ」は類似する。
「特許庁 商標審査基準」より引用

(2-4) 分離観察

商標のうち、結合している各部分を分離して考察するケースです。特に一つの商標の中に異なる要素が含まれるなら分離観察を用いて判断できます。

結合商標の分離観察の具体例

商標が、図形と文字とを持つ結合商標は、商標全体を形作る図形の部分と文字の部分とを別々に参照します。

 例えば、図形部分は他の似ている図形商標を参照し、文字部分は他の似ている文字商標を参照します。

(2-5) 審査基準

結合商標の判断について特許庁の審査基準が参考になります。

  • 形容詞等の修飾句がある場合には、その修飾句がないものとして結合商標を考える
  • 文字の大きさに大小がある場合には、大きい方と小さい方のそれぞれの要素を考慮して結合商標を考える
  • 結合商標の各要素が大きく離れて表されているなら、それぞれの要素を考慮して考える
  • 有名な部分を含む商標は、その有名な要素を考慮して結合商標を考える
  • 「商標審査基準(平成28年4月1日適用、特許庁編)」より引用

文字からなる結合商標の場合

文字のフォント、大きさ、文字の間隔が等しくてそれぞれの標章に強弱がなく、全体では一体の文字だけの結合商標にもかかわらず、分離観察の対象としてみることもあります。

例えば、文字数が多い結合の商標とか、複数の意味を持つ部分を認識できる場合です。

文字のみの結合商標の分離観察の具体例

分離観察についても特許庁の審査基準が参考になります。

結合商標「cherryblossomboy」に代表される複数の意味合いを認識可能な事案では、結合商標「cherryblossomboy」より「チェリーブロッサム」の部分が除かれて出るので、この分離要素と対比します。

結合商標「chrysanthemumbluesky」に例示できる多くの文字数を含む事案では、結合商標「chrysanthemumbluesky」より「クリサンシマム」の要素と「ブルースカイ」の要素が出るから、二つの分離要素が較べられます。

(3)結合商標の判例

(3-1) SEIKO EYE事件(平成5年9月10日)

背景

最高裁前の判決の段階で、結合商標「SEIKO EYE」から「EYE」の要素が出ると扱われたけれども、最高裁で指定商品が眼鏡なら商標の判断要素へ較べる「EYE」の要素を使えないと判断されました。

結論

「SEIKO」の文字と「EYE」の文字の結合から成る商標が指定商品である眼鏡に使用された場合には、「SEIKO」の部分が取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから、それとの対比において、眼鏡と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字である「EYE」の部分のみからは、具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情が認められない限り、出所の識別標識としての称呼、観念は生じず、「SEIKOEYE」全体として若しくは「SEIKO」の部分としてのみ称呼、観念が生じるというべきである。
平成3(行ツ)103 審決取消 商標権 行政訴訟平成5年9月10日 最高裁判決より引用

(3-2) 「小僧」と「小僧寿し」(平成9年3月11日)

背景

全国的に知られた商標の「小僧寿し」について、「小僧」又は「KOZO」を類似するかどうかの要素として全体から取り出して扱えない旨の最高裁判決です。

通常商品の寿司に対する商標「小僧寿し」の場合、「寿し」の部分は評価されないと感じます。

しかし「小僧寿し」のレベルまで有名なら、全体で一体感が生まれて商標全体として消費者の心に残っていますので、一文を切りはして判断しないと理解します。

結論

「小僧寿し」は、一般需要者によって一連のものとして称呼されるのが通常であるというのであるから、右によれば、遅くとも昭和五三年以降においては、「小僧寿し」「KOZOSUSHI」「KOZOSUSI」「KOZO ZUSHI」の各標章は、全体が不可分一体のものとして、「コゾウズシ」又は「コゾウスシ」の称呼を生じ、企業グループとしての小僧寿しチェーン又はその製造販売に係る本件商品を観念させるものとなっていたと解するのが相当であって、右各標章の「小僧」又は「KOZO」の部分のみから「コゾウ」なる称呼を生ずるということはできず、右部分から「商店で使われている年少の男子店員」を観念させるということもできない。すなわち、被上告人標章においては、標章全体としてのみ称呼、観念が生ずるものであって、「小僧」又は「KOZO」の部分から出所の識別標識としての称呼、観念が生ずるとはいえないのである。
平成3(行ツ)103 審決取消 商標権 行政訴訟平成5年9月10日 最高裁判決より引用

(4)まとめ

結合商標の場合は、それぞれの標章の構成要素を任意に切り離したり、切り離さなかったりする前に、需要者の取引の実情とか、商標全体の要素の組み合わせを観察し考察を進めます。

結合商標の類似判断は判断に悩むポイントが多いことから、特許事務所へ見解を求めて最終判断の材料にするのがよいです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247


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